スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2012年5月5日(土) 「娘、妻、母」成瀬巳喜男

日本文化会館でまた面白い映画の特集が組まれている。時代を隔てずに、日本の映画をテーマ別に分類して流している。先日パンフレットをもらってきたので、早速出かけてみた。
お目当ては断然古い映画だ。昔の映画は、当時の日本のありのままの姿を映していて、記録映像として見るだけでも興味深い。さらに、その頃生きていた人たちの会話(今と全然違うテンポ、言葉遣い)、ファッション、家の中のインテリア、風習、考え方、人間関係の在り方と、どれをとっても面白く、飽きない。私が特に好きなのは、成瀬巳喜男だ。なーんにもオチがない話が多く、最後も(ハレ~?)みたく終わってしまうことも多いんだけど、なんか好きなの☆今日もそんな映画だった。
1960年に撮られた「娘、妻、母」というタイトル。もうこれだけで分かるでしょうが、家族の中での様々な立場の「女」を描いている。
役者は、原節子、高峰秀子、草笛光子、森雅之、宝田明、淡路恵子、仲代達矢、杉村春子、加東大介、笠智衆と豪華な顔ぶれなのだが、誰もがみな淡々と日常生活を生きる市井の人たちだ。
私はなかでも高峰秀子が好きだ。あと杉村春子のいけずなおばあさんも憎めなくて好き。

 東京のある家族。母、長男夫婦と小さな息子、末娘の5人が住んでいるところに、日本橋の旧家に嫁に行った長女が出戻りで帰ってくる。長女の夫が事故で亡くなったからだ。
家族は他に結婚、独立したカメラマンの次男、お嫁に行ってうるさい姑に悩む次女がいる。彼らは、それぞれ子供はいない。
兄弟は5人で、実家の財産は住んでいる亡き父の残した家屋と土地だけ。その家を長男がみなに無断で担保に入れ、借金をし、それが焦げ付いてしまった。出戻りの娘は結婚していた家からまとまった現金をもらっていた。
そこに長男、うるさい姑から逃れてマンションに移りたい次女が目を付け、借金を申し込む。
家を手放さなければならなくなった家族は、母の面倒を押し付け合う…と、なんとも現実的な問題が持ち上がってくる。
同じ家で過ごしてきた家族であっても、大人になるとそれぞれの事情が出てくる。経済状態も異なり、結婚した家の家風も違ってくる。金銭感覚もそうだし、決して血縁だからといって美しく譲り合ったりはしない。当然分配される遺産は自分の権利として主張する。しかし親に対しての思いやりは概して希薄だ。
一番心やさしい長女は、母を一緒に引き取って再婚してくれるという資産家との再婚話に心を動かす。長男の嫁は、義母と同居するのが長男の勤めと思っている。母は、厄介ものになった自分を哀しみ、老人ホームのパンフレットを取りよせる。

こうしてお金がらみの心理劇が繰り広げられる茶の間を覗き見るのは、なんともリアルだけど、時代の流れなんだろうな~という気がする。
舞台は、田舎のギリギリの極貧の生活ではない。食うに困っているわけではない。みな一応仕事があったり、多少の蓄えもある人たちだろう。自分の資金は増やしたいし、投資したい。お金があればある程度の幸せは満たせる。もっとお金があれば…という上昇志向が誰にでもある。
また女は、嫁いだら嫁ぎ先のしきたりに従って、自らを抑えて控えめに生きる、というのは長女の時代で終わりだ。自分のわがままが多少は出せる風潮になってきたので、できれば親の面倒はみたくない、義理の親との同居なんて御免こうむりたい。

金銭問題が持ち上がる前に、母親の還暦祝いの夜がある。実家に集い、談笑し、母は子供たちの優しさにうたれ、幸せをかみしめる。そんな微笑ましい家族の愛情物語が、あっけなく崩壊していくのをみるのは空しい。しかし、それが夢物語でない現実なのかもしれない。成瀬はそれを皮肉っぽく、でもそれぞれの立場や性格の違いを浮き彫りにしながら描く。その辺が面白い!
深い心理描写やアイロニーは、フランス映画に通じるものがあると思う。お客はほとんどフランス人だったが、客席からは時折笑いも漏れ、終わった後は満足げに帰っていく人が多かった。


ランキング
よろしかったら一押しを!
にほんブログ村 海外生活ブログ フランス情報へ

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリー
カレンダー(月別)
06 ≪│2017/07│≫ 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
最近のコメント
リンク
最近のトラックバック
プロフィール

ikuko

Author:ikuko
栃木県宇都宮市出身。1993年2月よりフランス在住。現在パリ郊外に住んでいます。

フリーエリア
RSSフィード
FC2カウンター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。