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≪書評≫ 「ボッシュの子」

書評を読んで気になっていた「ボッシュの子」(ジョジアーヌ クリュゲール 著:小沢君江 訳)(祥伝社)を読む。
第二次世界大戦中にドイツ兵と恋愛し、子供を宿したフランス女性たちは「売女」と呼ばれ蔑視されたという。戦後、敵国人と関係を持った咎で「公開処刑」と称して広場で辱めを受け、髪の毛を丸坊主にされたりした。その子供たちもまた「ボッシュ(ドイツ人)の子」と呼ばれて差別されてきた。その数フランスに20万人ともいわれている。
もちろんドイツ側でフランス兵とドイツ女性の間に生まれた「敵国人の子」もいた。いや、戦争がある限り、そうした子供は世界中に生まれているはずだ。
戦後65年になるが、未だにその暗い、陰惨な過去により、自分の出生を手放しで喜べていない人たちがいるというのは、苦しいものである。生まれてきたこと自体を否定され、母親からも隠されるようにして生きてきた少女にとっては、人を愛することも、人から愛されることも難しいだろう。実際、著者であるジョシーヌは、どこか頑なで不器用な印象を受ける。その意固地さゆえか、恋愛をしても結婚をしてもどこかで冷めたもう一人の彼女がいて、彼女自身の幸せを阻んでいるような感じがする。誰も完璧になんてなれないのに、ましてや誰かとの関係が一点のゆがみもないことなどありはしないのに。

家は極貧で孤独という不幸な少女時代、一目でいいから「父親に会いたい」と願い、彼女はあるつてを頼って一通の手紙を認める。それを頼りに彼女に会いに来た父親と偶然道端で出会えたシーンは身震いがした。それまで全く会ったことのない父親のことをすぐに分かったというのだ。血のつながりというのは、そんなに強いものなんだろうか。
しかし、残念なことに両者には言葉の壁があり、うまく意思疎通ができない。母親はもう再婚しており、子供もいる。聞けば父も再婚しているという。
再会を願ってその後に行方を捜した時には、父は亡くなっていた。フランス女性と関係を持ったドイツ兵も、きつい労役に何年もやられ、体を蝕まれていたのである。
それでもその後、彼女はドイツの異母兄弟に出会い、再び言葉よりも強い血の結びつきを感じ、交流を深めていく。まるで映画の中の話のようにドラマティックだ。しかしこれは現実なのである。

数年前に、フランスのテレビ局が「ボッシュの子」を取り上げ、そのタブーにメスを入れた。その時に、ドイツ人の父親や自分のルーツを知りたくて悩んでいる「ボッシュの子」達がいかに多いかということを訳者は知ったそうだ。(訳者は「OVNI」の創始者の小沢さん。パワフルな人だ)
フランスに住んでいても、隣にいる人のルーツまで深くは考えない。アジア人とか黒人とかアラブとか、はっきり分かる顔立ちをしているならまだしも、ヨーロッパ人(白人)の間でも、そうしたドロドロした問題が、いまだに根深く残っているとは…。国境なきように見えるこのEUの中で!そのことに一番心を揺すぶられた。


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Author:ikuko
栃木県宇都宮市出身。1993年2月よりフランス在住。現在パリ郊外に住んでいます。

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