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2009年12月22日(火) 「わたしを離さないで」 カズオ イシグロ

カズオ イシグロの「わたしを離さないで」(原題 NEVER LET ME GO)を読了。

カズオ イシグロは、日本で生まれ、5歳の時に父親の仕事(海洋学者)の関係でイギリスに渡り、後にイギリス国籍を取得した。現在55歳。大学院を卒業後、一時はミュージシャンを目指したが、やがてソーシャルワーカーをして働きながら執筆活動を開始…と略歴を読むだけで興味をそそられる人だ。実は、この人は名前だけは長いこと知っていたけど、本は初めて読んだ。
この「初めて読む本」にこの作品を選んでよかったのかどうか、私には何ともいえない。原作は英語で書かれた物だ。2005年に発表され、英米で絶賛され、その後世界的なベストセラーになった…とあるが、私自身の読後感は決してよくはなかった。心が揺すぶられた、でもないし、感動したというのともちょっと違う。でも多分、忘れることのできない小説であることは確かだ。

ネタバレになるのであらすじを書くことは避けたいが、感想を書いても読んでいない人には意味不明だろう。
ある女性の何でもない日常を淡々と書いてあるようでいて、その女性の存在自体が物語の要でありフィクションなのだ。
彼女の一人称で語られる事柄はあまりにも突拍子もないものなのに、本人が感情をどこかに置き忘れたかのように、既成の事実として受け止められているのがなんとも奇怪だった。一番不思議なのはつねにこういう疑問が湧いてきても誰も答えてくれないことだ。
「あなたにとって生きるってことはどういうことなのか…?」と。それが歯がゆくて、苦しくて、かなしかった。
それはつまり、私にとっても同じ問いを突きつけられているからではないだろうか?そして、それに対して彼女ほど毅然と胸を張って答えられないもどかしさがある。
命の始まりとその行方、ひとりひとりの人が果たす「使命」…。
生まれたことに何の疑問も抱かずに、生きていることを当たり前としている人には決して思いつかないウソばなしだと思う。死ぬことで完結する使命を自覚しているかいないか、そしてどんな宿命でも生きることに喜びは見出せるものか。

この物語のかもし出すトーンは、潮の香りのする湿った風のような冷たさを持って、読む人の心にさざ波を起こす。


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Author:ikuko
栃木県宇都宮市出身。1993年2月よりフランス在住。現在パリ郊外に住んでいます。

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