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2009年6月5日(金) 遅ればせながら「東京ソナタ」を観た

夜、早めに夕食を作り、ずっと観たかった黒澤清監督の「東京ソナタ」を観に、うちの近くの映画館へひとりで行く。先週も主人と行った場所。最近日本週間なのかな?「ポニョ」も上映するみたいだし…。

東京に住む4人家族。やや暴君気味の父はリストラされてしまったことを自分の「権威」を守るため家族に言えずに苦しんでいる。大学生の長男は、家族や人類の平和のためにアメリカの軍隊に入る。次男の6年生のボクは、近所のピアノの先生に憧れ、給食費を使ってピアノのレッスンを家族に内緒で受けている。専業主婦の母親は、家族の誰からも空気のように扱われ、ただご飯を作り続けている。そんなバラバラな家族が再生できるのか…。

誰にでも心の中には闇があり、そしてそれを抱え込んで生きている。そこは「家族」だから、「子供」だからといって決して踏み込めない領域だ。自分の思っていることを100パーセント口に出して言っている人なんてどこにもいないし、ましてや自分の心の奥に潜む感情に気付かない場合だってあるのだから。
そして、お互いに思いやり、いたわり合い、何でも話し合って、「家族とはかくあるべき」という、道徳の教科書に出て来るようなモデルはこの世に存在しないのではないかと思う。
でも誰もが、できれば理想の家族に近づきたいと心のどこかで願っている。だから少しずつ自分を曲げて、無理をして、いいたいことを我慢し合っているのではないだろうか。

しかし、ある些細なことがきっかけで、人の心の堤防はいとも簡単に決壊してしまう。
ひとつの大きなきっかけは、父親が会社から「不要」という烙印を押されたことだ。
それまで自分で築いてきた権威の砦が崩れてしまった時、弱みを見せる代わりに父親は、過剰な暴力で子供を従わせるしか方法がない。しかも、リストラもうまく隠していたつもりでいたら、妻にはずっかりばれていたという、最悪のパターン。
「やり直したい!」「人生をやり直したい」と連呼しながら、どこまでも駆けていっても、現実からは逃げられない。挙句の果てにひき逃げされてしまう。(しかし次の日の朝にむっくりと起き上がって、平然と家に帰ってくるところが黒澤監督らしくホラーだ☆)

母親の方のきっかけは、家の中で泥棒に襲われ、なぜか一緒に逃げることになってしまったこと。
それまでの、空気のような、何の感情もないような平凡な女だったのが、一夜を越して、色のある顔つきになっていた。(ここの映像のライティングが秀逸)泥棒は盗んだ車ごと、海に入っていったのが朝になってわかるのだが、彼女は、また何食わぬ顔で朝帰りする。(このエピソードはちょっとありえなくて、ここだけ「作った」感じ。しかもこの部分だけ「パルプフィクション」っぽく時間が交差する)

長男は戦地に赴いて、独自の理論で思いっきり変な方向に進んでいく。(純粋まっすぐ君だから、自分の考えに絶大の自信を持っている)

次男のボクは、無理やり父親にピアノをやめさせられ、すべてがイヤになって家を出、、バスの無賃乗車をして一晩留置所に入れられてしまう。そして保釈されて家に帰ってみれば誰もいない。

それぞれの勝手な抵抗を試みた次の日の朝、帰宅した3人は朝食の食卓をいつものように囲む。その時、お互いのこと何にも聞かないし、何の会話もないのだけれど、「家族って、ただこうして一緒に朝ごはんを食べることなんじゃないだろうか~」というシンプルな真実に気付かされた。

映画全般を通して感じがいいな~と思ったのは、「ただいま」とか「いただきます」とか「ごちそうさま」っていう日本のあいさつのことば(きちんとした仏訳にはならないんだけど、ニュアンスは伝わったと思う)や、決して声を荒げないお母さん、人々の礼儀正しさ、みたいなもの。これは、「日本の良さ」だと思う。外国で観ていると、こういう部分が妙に気になるのだよ。
しかし一方で、「俺もお前を無視するからお前も俺を無視しろ」って言っちゃう担任教師とか、やみくもにアメリカに迎合する若者だとか、問答無用でまだ小学生の子供を留置所に入れてしまう警察官だとか、子供を虐待する父親だとか、そういう普通ではない部分の描かれ方がやたら強調(あるいはデフォルメ)されていたので、日本国内での上映だったら洒落と分かってもらえるかもしれないが、海外だとこれが日本の現状だと誤解されるおそれもあるな~と心配になった。(海外の映画祭に出す作品だったら尚更、日本という国が曲解される危険がある)こういうところ、ちょっとは気にしてほしいんですワ。

そして最後に、少年の弾くピアノはうますぎた(←ちょっとあれはありえないでしょう)。また終わり方はちょっと不満。なんかもう一押ししてよ~って感じだった。
でも父親役の香川照之の演技は脱帽もの!だし、他のキャスト(母親のキョンキョンも好演)もはまり役で、かなりポイント高い作品だった。


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Author:ikuko
栃木県宇都宮市出身。1993年2月よりフランス在住。現在パリ郊外に住んでいます。

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